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食品の技能比較試験 栄養成分第4回(2019年6月)結果

公益社団法人日本食品衛生協会 食品衛生研究所は、2016年より食品の技能比較試験事業を開始いたしました。本技能比較試験は、外部の有識者により構成された技能比較試験委員会の助言を得て開発され、国際規格ISO/IEC 17043(技能試験に対する一般要求事項)に基づく、国際的にも適切であると認められる技能試験スキームを目指して運営されています。

2019年は、一般栄養成分にミネラル類(ナトリウム、カルシウム、鉄)及びビタミン類(レチノール、α-カロテン、β-カロテン、α-トコフェロール)を加えた第4回の栄養成分技能比較試験を実施しました。ここでは、この第4回栄養成分の技能比較試験の

を紹介します。来年の2020年には第5回の栄養成分技能比較試験、第2回ヒスタミン技能比較試験を計画しています。

技能比較試験のフレーム

技能比較試験の意義

食品の国際規格であるCODEX文書の、CAC/GL27(1997)”Guidelines for the Assessment of the Competence of Testing Laboratories Involved in the Import and the Export of Food”では、食品の輸出入に係る試験所の要件として、以下の4つの項目が挙げられています。

○ISO/IEC 17025 に適合している

適切な技能試験に参加している

○妥当性確認された方法を用いる

○内部品質管理を実施している

また、ISO/IEC 17025 ”General requirements for the competence of testing and calibration laboratories”においても、7.7 Ensuring the validity of resultsにおいて、技能試験を含む試験所間比較への参加を挙げています。このように、試験結果を国際的に保証するためには、技能試験への参加が必須です。

技能比較試験のスキーム

技能試験そのものについても国際的な規格、ISO/IEC 17043があります。この規格では、技能試験提供者の組織、技能試験試料、結果の評価等について定められています。食品衛生協会の技能比較試験は、この規格に基づいた組織により、適切な試料と評価報告を供給することを目指して運営されています。

技能比較試験の組織を示します。

 

提供者である(公社)日本食品衛生協会食品衛生研究所内に、食品の技能比較試験委員会が設置されています。技能比較試験委員会の役割は

  • 技能比較試験年次計画の作成
  • それぞれのラウンドの企画書、実施要領の作成、試験結果の評価、報告書の作成
  • 不測の事態発生時、技術的な面での提案と原因究明
  • 運用にかかわる提案
  • 技術委員の推薦
です。技術委員はそれぞれの技能比較試験毎に任命され、適切な試料の選定と作製、均質性及び安定性の評価、結果の評価に対する専門的助言を行います。
さらに、ISO/IEC 17043の序文では、技能試験の目的の一つとして、「比較の結果に基づく参加試験所の教育」が挙げられています。これを踏まえて、技能試験の終了後に、参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を行います。

食品の技能比較試験 栄養成分第4回の概要と結果

食品の技能比較試験 栄養成分第4回の概要

試験内容
試験項目 全窒素、たんぱく質、脂質、水分、灰分、炭水化物、熱量、ナトリウム、カルシウム、鉄、レチノール、α-カロテン、β-カロテン、α-トコフェロール
試験方法 試験所が通常使用している方法あるいは任意の方法
試験結果の評価方法 ロバスト平均及び標準偏差に基づくz-スコア

 

実施スケジュール
募集開始 2019年 2月20日
募集締切 2019年 5月 7日
試料配付 2019年 6月14日
結果提出締切 2019年 7月 8日
最終報告書配付 2019年 8月 16日

 

試料
試験品目 調理加工品(焼きそば 約100g)
【原材料:蒸し中華麺、キャベツ、豚バラ、人参および調味料】
試料の作製 日本ハム株式会社 中央研究所品質科学センターにて作製
均質性試験  

試料(缶)の間の成分の変動が、技能比較試験結果に影響を与えない程度であることを確認するために、均質性試験を実施しました。
 Microsoft Excelで発生させた乱数表に従って、10缶を選択し、それぞれの内容物をよく混合し、約50 gを2回採取し、それぞれの全窒素、たんぱく質、脂質、水分、灰分、炭水化物、熱量、ナトリウム、カルシウム、鉄、レチノール、α-カロテン、β-カロテン、α-トコフェロールを測定しました。各項目の20個の結果を分散分析し、平均値、測定値の標準偏差と試料間標準偏差を求めました。均質性の判定は The International Harmonized Protocol for the Proficiency Testing of Analytical Chemistry Laboratories (Pure Appl. Chem., Vol. 78, No. 1, pp. 145-196, 2006)のRecommendation 7及び8に従って評価しました。その結果、この試料は技能比較試験に使用できる均質性を有していると判断されました。

食品の技能比較試験 栄養成分第4回の結果

参加試験所数 43
  試料配付数 43
  結果報告数 43

一部の項目のみ報告した試験所があるため、各試験項目のデータ数は次のとおりであった。

  全窒素 :39 ナトリウム :35
  たんぱく質 :40 カルシウム :22
  脂質 :41  鉄        :19
  水分 :40 レチノール : 7
  灰分 :40 α-カロテン : 6
  炭水化物 :38 β-カロテン : 6
  熱量 :38 α-トコフェロール : 9

    

報告された結果から、項目ごとに平均値、ロバスト平均値、標準偏差、ロバスト標準偏差を求めました。ロバスト平均値とロバスト標準偏差は、集団の中に外れた値があった場合に、その影響を除外した平均値と標準偏差です。参加試験所の報告値、ロバスト平均値、ロバスト標準偏差から、下式によりz-スコアを計算しました。
              z-スコア =(試験所の報告値−ロバスト平均値)/ロバスト標準偏差    
報告値が概ね正規分布に従っていれば、| z-スコア | ≦ 2 となる確率は95.45 %、2 < | z-スコア | < 3となる確率は4.28 %、| z-スコア | ≧ 3となる確率は0.26 %です。このことから、試験結果はz-スコアに基づいて、| z-スコア | ≦ 2 ならば満足、2 < | z-スコア | < 3 ならば疑わしい、| z-スコア | ≧ 3 ならば不満足と評価されます。
 ビタミン類は報告数が少ないことから、ロバスト平均値を求めず中央値を求め、この値から推定標準偏差を計算しました。

 

全窒素結果

参加試験所43中、39試験所から結果が報告されました。報告結果は0.817 g/100 g〜0.960g/100 gの範囲にあり、平均値は0.873 g/100 g、ロバスト平均値は0.870 g/100 gで、2つの平均値はほぼ一致しました。標準偏差は0.032g/100 g、ロバスト標準偏差は0.025 g/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差よりもやや大きかった。全窒素報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-2.1〜3.6でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は2、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は3でした。| z-スコア | ≦ 2となった試験所数は34でした。

たんぱく質結果

40試験所から結果が報告されました。報告結果は5.11 g/100 g〜6.00 g/100 gの範囲にあり、平均値は5.46 g/100g、ロバスト平均値は5.43 g/100 gで、全窒素と同様に2つの平均値はほぼ一致しました。標準偏差は0.20 g/100 g、ロバスト標準偏差は0.15 g/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差よりもやや大きかった。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-2.1〜3.7でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は3、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は2でした。| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は35でした。

脂質結果

41試験所から結果が報告されました。報告結果は4.60 g/100 g〜10.1 g/100 gの範囲にあり、平均値は8.42g/100g、ロバスト平均値は8.57 g/100 gで、ロバスト平均がわずかに大きくなりました。標準偏差は0.95g/100 g、ロバスト標準偏差は0.46 g/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差の2倍程度となりました。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-8.6〜3.3でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は4、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は0でした。| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は37でした。



水分結果

40試験所から結果が報告されました。報告結果は63.8 g/100 g〜65.8 g/100 gの範囲で、平均値及びロバスト平均値は共に64.7 g/100 gとなりました。標準偏差は0.44 g/100 g、ロバスト標準偏差は0.46 g/100 gで、これらも同程度の値でした。40試験所の報告結果は64.5 g/100 g付近を中心としてほぼ対称的に分布し、離れた結果はみられませんでした。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-1.8 〜2.5で、| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は0でした。2 < | z-スコア | <3となった試験所数は1でした。| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は39でした。

 

灰分結果

40試験所から結果が報告されました。報告結果は1.40 g/100 g〜3.01 g/100 gの範囲にあり、平均値とロバスト平均値は共に2.03 g/100 gで、両者は一致しました。標準偏差は0.20 g/100 g、ロバスト標準偏差は0.057 g/100 gで、標準偏差がロバスト標準偏差の3倍以上となりました。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-11.0〜17.2で、| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は4でした。2 < | z-スコア | <3となった試験所数は2、| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は34でした。

 

炭水化物結果

38試験所から結果が報告されました。報告結果は17.3 g/100 g〜23.1 g/100 gの範囲で、平均値は19.4 g/100 g、ロバスト平均値は19.3 g/100 gとなり、両者はほぼ一致しました。標準偏差は1.1 g/100 g、ロバスト標準偏差は0.67 g/100 gで、標準偏差がロバスト標準偏差をやや上回った。1試験所が低値側に、2試験所が高値側に離れた値を報告しました。この低値側に離れた値を報告した試験所は、脂質の項目では平均よりも1.5 g/100 g程度高い値を報告しています。炭水化物は差引き法で求められるため、この試験所の炭水化物の値が低くなったと考えられます。高値側に離れた値を報告した2試験所は、脂質の項目で平均値の60%程度の値を報告しており、この結果炭水化物の値が高くなったと考えられます。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-3.0〜5.6で、| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は3でした。2 < | z-スコア | <3となった試験所数は1でした。| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は34でした。

熱量結果

38試験所から結果が報告されました。報告結果は155 kcal/100 g〜184 kcal/100 gの範囲にあり、平均値とロバスト平均値は共に176 kcal/100 gでした。標準偏差は5.6 kcal/100 g、ロバスト標準偏差は3.8 kcal/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差を上回った。2試験所が低値側に離れた値を報告しました。その2ヶ所は脂質において他の試験所よりも低い値を、炭水化物では高い値を報告していました。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-5.6〜2.1でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は2、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は 1、| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は35でした。

ナトリウム結果

35試験所から結果が報告されました。報告結果は12.4 mg/100 g〜661 mg/100 gの範囲にあり、平均値は589 mg/100 g、ロバスト平均値は608 mg/100 gで、平均値がロバスト平均値よりやや小さくなった。標準偏差は107 mg/100 g、ロバスト標準偏差は31 mg/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差の3倍程度となりました。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-19.5〜1.7でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は2、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は1、| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は32でした。

カルシウム結果

22試験所から結果が報告されました。報告結果は1.73 mg/100 g〜817 mg/100 gの範囲にあり、平均値は117 mg/100 g、ロバスト平均値は88 mg/100 gで、平均値がロバスト平均値を上まりました。標準偏差は158 mg/100 g、ロバスト標準偏差は8.1 mg/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差の20倍程度となりました。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-10.6〜90でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は2、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は1、| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は19でした。

鉄 結果

19試験所から結果が報告されました。報告結果は0.034 mg/100 g〜2.07 mg/100 gの範囲にあり、平均値は1.59 mg/100 g、ロバスト平均値は1.65 mg/100 gで、平均値がロバスト平均値をやや下回りました。標準偏差は0.41 mg/100 g、ロバスト標準偏差は0.16 mg/100 gで、標準偏差はロバスト標準偏差の2.5倍程度となりました。報告結果のヒストグラムを示します。

ロバスト平均値とロバスト標準偏差を用いて計算したz-スコアを示します。z-スコアの範囲は-9.8〜2.5でした。| z-スコア | ≧ 3 となった試験所数は1、2 < | z-スコア | <3となった試験所数は1、| z-スコア| ≦ 2となった試験所数は17でした。

ビタミン類結果

ビタミン類は報告数が少ないことから、ロバスト平均値を求めず中央値を求め、この値から推定標準偏差を計算しました。

 

 

フォローアップ研修 (プログラム、アンケート結果等)

技能比較試験終了後に、参加者の教育と技能向上を目的としたフォローアップ研修を実施しています。栄養成分の技能比較試験のフォローアップ研修は、2019年9月10日に開催されました。受講者は32名で、研修内容は以下の通りでした。

T 開 会
    挨拶  技能比較試験委員会委員長  森 曜子

U 研 修

1 第4回栄養成分技能比較試験結果の概要  松田りえ子
2 栄養成分技能比較試験条件等の集計結果 井上 誠
3 栄養成分分析における注意点  安井明美
4 試料作製者の立場からみた内部質管理について 荒川史博

 

アンケート結果

フォローアップ研修時に、研修内容に対するアンケートを実施しました。
「研修会の内容は全体として役に立ちましたか?」への回答は、以下のとおりでした。

非常に良かった 18   良かった 11   普通 2   少々不満 1

また、以下のような意見が寄せられました。

  • 質問に丁寧に答えていただきありがとうございます。内部質管理についてとても勉強になりました。
  • 事前質問を一覧にまとめて回答頂けたこと、またメールでも送っていただけたことが非常に良かった。
  • 検査を行う上で均質化の重要性を改めて学ぶことができました。それぞれが持つ特性をきちんと理解し今後分析を進めていきたいと思います。
  • 質疑応答の時間で、気になっていたことが質問でき解決できた。
  • 実際に分析を行っているため具体的な話を聞くことができ参考になった。
  • 事前質問の内容を丁寧に回答いただけてよかった。また、他社も同じような質問があることもわかって困っていることや悩みが共有できたと思います。検査結果の考察や注意事項の講義も大変勉強になった。
  • 内部精度管理、外部精度管理の内容がよくわかりました。
  • 質問への回答はすごく参考になった。(他社でも同じように悩んでいるのがよくわかった。)
  • 今回の質問事項一覧はとても参考になりました。次回も期待します。
  • ビタミン分析についてもう少し評価してほしかった。

また、ご要望として

  • 栄養成分表示推奨項目やアメリカへの輸出時に必要な項目の技能試験や講義を希望します。
  • 栄養成分のみの技能比較試験を希望します。安価であれば毎年参加しやすい。
  • 水産缶詰⇒八宝菜⇒やきそば⇒やきそば  次は別の食品でお願いします。

これらのご意見を参考に、今後も技能比較試験とフォローアップ研修を継続してまいりたいと思います。