手洗いは昔から世界中で行われており、多くの文化や宗教で清めの儀式として取り入れられていました。

古代エジプトでは、神殿に入る前に手を洗う習慣がありました。また、ユダヤ教やヒンドゥー教では、手洗いは食事や宗教儀式の前後に行われ、清潔と神聖さを保つ重要な行為とされていました。これらの習慣は、当時の人々にとって宗教的・精神的な意味合いが強く、衛生とは直接結びついていませんでした。

中世ヨーロッパの貴族や聖職者は、マナーとして食事の前後に手を洗っていました。フランスの食事マナーの本には、「指は清潔にし、爪はきれいに手入れをしなさい」と書かれていました。

衛生面における手洗いの重要性は、 19世紀まで科学的に認識されていませんでした。そのため、病院などで細菌やウイルスによる感染症が頻繁に起こっていました。 

ハンガリーの医師であるゼンメルワイスは、手洗いが感染症の発生率を劇的に下げることを発見しましたが、当時は受け入れてもらうことができませんでした。 

手洗いが世界に広がったのはその後、ルイ・パスツールによって細菌が病気を引き起こす原因であることが科学的に証明されてからでした。これにより、手洗いが衛生的予防策として重要視されるようになりました。 20世紀になると、手洗いは徐々に医療現場や日常生活に取り入れられ、石けんが広く使われるようになり、現代では感染症予防の基本として世界中で普及が進んでいます。

日本でも、宗教的な清めの習慣から始まり、その後衛生的な行動としての手洗いへ発展していきました。人々がよく集まる場所である神社に手水舎(しょうずや)がつくられ、手洗いや口をゆすぐことがすすめられました。その後、次第に食前やトイレの後などにも手洗いをするようになったと言われていますが、日本で衛生の基本として手洗いが普及したのは戦後のことになります。

手洗いの歴史を振り返ると、科学や文化、そして人々の生活習慣の中で大きな進化を遂げてきたことがわかります。現在、手洗いは私たちの健康を守る基本中の基本です。過去の教訓を活かし、これからも清潔な習慣を次世代に伝えていきましょう。

※記載の歴史には諸説ありますので、参考までご覧ください。

「食品衛生は手洗いに始まり、手洗いに終わる」といわれるくらい、手洗いは重要なことです。では、どうして手を洗うことは重要なのでしょうか。

わたしたちは普段から、どんなことをするときも手を使います。遊ぶとき、ゲームをするとき、動物にさわったとき、トイレに行ったとき。いろいろなものにさわることで、そこについている菌やウイルスなどの微生物が手についてしまいます。一見きれいに見える手にも、菌やウイルスなどの微生物がたくさんついているのです。

食事のときにも、もちろん手を使いますが、もし、手が汚れていたらどうなるでしょう？微生物がお皿や箸などの食器や食べものについてしまい、みなさんの体内に入り、食中毒になってしまうおそれがあります。

しかし、手についた微生物は、きちんと手を洗うことで、洗い落とすことができます。また、手洗いにより、インフルエンザ、風邪などのウイルスも洗い落とすことができます。つまり、手洗いは病気予防にも効果的です。

日本食品衛生協会では、きちんと洗える手洗い手順を「衛生的な手洗い」として普及活動を行なっています。みなさんも、衛生的な手洗い手順できちんとした手洗いができるようになりましょう！

日本食品衛生協会では「手洗いマイスター」を育成しています。
手洗いマイスターとは、根拠に基づく効果的な手洗いを学び、正しい手洗いを食品等事業者をはじめ、地域の消費者に普及する役割を担って、全国各地で活躍しています。
手洗いマイスターは飲食店や食品工場、幼稚園や保育園、小学校などで正しい手洗いの方法や、手洗いの大切さを指導します。

手洗いマイスターの派遣を希望される場合、ぜひお近くの食品衛生協会までお問い合わせください！